2032年計画 #6 自分で作った道具は、まず自分で疑いました。
前回、緯度経度と標高が分かる道具ができました。
うれしくて、しばらく画面を眺めていました。
でも、ふと冷静になりました。
「これ、本当に信じていい数字なんだろうか。」
自分で作った道具です。
だからこそ、自分を疑う目も必要でした。
次の目標は、「危険」を言い当てることでした。
標高が分かるだけでは十分ではありません。
大雨が降ったとき、その土地がどれくらい水に浸かる可能性があるのか。
これが分からなければ、「住める土地かどうか」は判断できません。
幸い、その情報も国が公開してくれていました。
「ハザードマップポータルサイト」です。
洪水のときに想定される浸水の深さが、地図の色として公開されています。
赤に近いほど深く。
黄色に近いほど浅い。
その色を、自分の道具に読み取らせることにしました。
想像していたより、ずっと地味でした。
最初は、もっと複雑な仕組みを想像していました。
でも実際は、とても地道でした。
地図は、小さなタイルの集まりです。
緯度と経度から、その場所の色を一つ読み取る。
あとは、その色を国の基準と照らし合わせるだけ。
派手さはありません。
でも、この積み重ねで道具は動きます。
だから、答えを知っている場所で試しました。
新しい道具を、いきなり知らない山で試すのは危険です。
もし間違っていても、間違いに気づけません。
そこで、なみ子と相談しました。
「まずは答えを知っている場所で試そう。」
選んだのは東京都江東区です。
ここは「ゼロメートル地帯」として知られています。
海より低い土地が広がり、大雨のリスクも昔から語られてきました。
いわば、答え合わせができる場所です。
試作品が、道具に変わった瞬間でした。
江東区の住所を入力しました。
数秒後。
画面にはこう表示されました。
標高、マイナス1.7メートル。
浸水想定、3.0メートルから5.0メートル未満。
「本当に海より低いんだ。」
知識としては知っていました。
でも、自分の道具が数字として示してくれると、重みがまったく違いました。
浸水想定も、これまで語られてきた江東区のリスクと一致しています。
「あ、本当に当たっている。」
その瞬間、ただの試作品だったものが、「使える道具」に変わった気がしました。
恵庭にも、同じ物差しを当ててみました。
答え合わせができたので、今度は恵庭市でも試しました。
標高31メートル。
浸水想定、0.5メートルから3.0メートル未満。
川が近いこの街らしい、納得できる数字でした。
江東区ほど極端ではありません。
でも、ゼロではありません。
現実に近い数字が返ってきました。
今日のなみ子
数字を見ながら聞いてみました。
「これ、もう信じていいのかな。」
なみ子は答えました。
「ピクセル一つで判定しているので、境界では多少のズレが出ることがあります。」
「でも、今回のように答えを知っている場所で確認できたことには、大きな意味があります。」
「道具は、作った瞬間より、確かめた瞬間から信じられるようになります。」
なるほど……。
この一言が、この日のいちばん大きな学びでした。
今週の前進
- 洪水リスクを判定する機能ができました。
- 「答えを知っている場所」で検証するという方法を覚えました。
- 江東区と恵庭市、どちらも現実に近い数字が返ってきました。
道具は、まだ完成していません。
でも少なくとも、「嘘をつかない道具」になり始めたという手応えがあります。
次は、地目や都市計画区域という、もう一段階複雑なデータに挑戦します。
シェープファイルという、聞いたこともない形式のデータも扱うことになりそうです。
またつまずくかもしれません。
それでも、一つずつ確かめながら進みます。
2032年まで。
今日も、小さな波を一つ起こせました。